2021年度 卒業研究

3DCGソフトの入門書制作

札幌市立大学生が3DCGに興味を持つきっかけ作り

1811051 中村 実莉

●背景

札幌市立大学(以下本学という)には、2年次後期に開講される「3DCG実習(表現系)」という授業がある。筆者が2年生の時、周囲では「難しい」「ついていけない」などの意見が上がっていた。その意見を聞いて2年次は受講しなかった。ところが3年生になり、3DCGに興味をもったため実際に受講をしてみると、とても面白く、事前に聞いていた印象とはずいぶん違うものであった。この経験から、3DCGは手を出しにくいイメージがあるために避けてしまい、学ぶ機会を失うというのはとてももったいないことであると強く感じた。そこで3DCGは難しいなどといった、始めにくいイメージを払拭し、3DCGソフトに触れたことがない人でも気軽に始められるようにするため、3DCGソフトの入門書制作を行うことを決めた。

●目的・ターゲット

3DCGは難しいなどといった、始めにくいイメージを払拭し、3DCGソフトに触れたことがない人でも気軽に始められるようにすることが本研究の目的である。ターゲットはこれから3DCGを学ぼうとしている本学の学生とし、制作物の公開も本学内のみを想定して制作した。

●事前調査

本学の学生が3DCGにどのようなイメージを抱いているのかを調査するため、本学の1年生にアンケートへの協力を依頼した。本学のデザイン学部1年生が回答し、有効回答数は18件であった。アンケートは「Googleフォーム」を用いて無記名方式で作成し、アンケートフォームのURLを対象者に送付することで回答を得た。調査期間は2020年11月26日から12月10日であった。

このアンケートでは3DCGに対して多くの学生が「難しい」「複雑」などのイメージを抱いていることがわかった。3DCGソフトの入門書を制作することで、3DCGに触れ、イメージが変わるきっかけを作ることができるのではないかと考えた。

また本学の3DCG実習を受講した学生の感想やその後自主勉強などを行なっているかを調査するため、本学の2年生にアンケートへの協力を依頼した。本学のデザイン学部2年生が回答し、有効回答数は15件であった。アンケートは「Googleフォーム」を用いて無記名方式で作成し、アンケートフォームのURLを対象者に送付することで回答を得た。調査期間は2020年11月26日から12月10日であった。

このアンケートでは3DCG実習(表現系)の難易度を「難しかった」と感じている学生が多いということがわかった。また多くの学生が3DCG実習(表現系)受講後、3DCGの勉強を続けていないということがわかった。入門書のような基礎事項をまとめた書籍があれば、3DCG実習(表現系)の復習にも繋げることができるのではないかと考えた。

●制作

制作したのはA4サイズ、64ページの3DCGソフトの入門書である。内容は基本編と実践編の2つに分けた。基本編は3DCGとは何か、よく使う用語の説明、基本操作など、3DCGを学ぶ上で必要な知識の説明に絞った。実践編は作品を作る際に使う機能の説明や、実際に簡単な作品を作る練習を主に載せた(図1)。

図1
図1 制作した入門書の表紙と1ページ

●制作物の検証

研究結果について調査するため、完成した3DCGソフトの入門書についてのアンケート調査をおこなった。本学のデザイン学部1、2、3、4年生、教員が回答し、有効回答数は22件であった。アンケートは「Googleフォーム」を用いて無記名方式で作成し、アンケートフォームのURLを対象者に送付することで回答を得た。調査期間は2021年11月19日から12月10日であった。

質問03の「本書を読んで3DCGに対するイメージは変わりましたか」に対して、「思っていたより取り組みやすいと感じた」と回答した人が最も多く、72.7%(16名)であった(図2)。

図2
図2 3DCGに対するイメージの変化

質問04の「本書を読んで3DCGをさらに学びたいと思いましたか」に対して、「思った」と「やや思った」という回答が合計で95.4%を占めていた(図3)。

図3
図3 3DCGをさらに学びたいと思ったか

また質問17の「本書が、札幌市立大学の学生が3DCGへ興味を持つきっかけになると思いますか」に対して、「なると思う」が、95.5%(21名)という回答を得ることができた(図4)。

図4
図4 入門書が3DCGへ興味を持つきっかけになると思うか

●結論・今後の展望

検証より、約83%の人が思っていたより取り組みやすいと感じたと回答しており、入門書が3DCGの難しいなどのマイナスイメージを払拭することに繋げることができたのではないかと思う。また入門書を読んでさらに3DCGを学んでみたいと感じた人は約94%であった。さらに入門書が本学の学生が3DCGへ興味を持つきっかけになると回答した人も約94%であったため、目的は達成できたと考えられる。今後は、本文量の調整や見出しの大きさの再確認を行うことで、内容を改善できるのではないかと考える。また本研究で制作した入門書の中で主に扱ったのはMayaのみであったが、3dsMaxやBlenderに対応したものを制作することでさらに多くの本学の学生が3DCGに興味を持つきっかけに繋げることも可能であると考える。