1911024 金子 泰千
「パケ買い」という言葉が存在するように商品をパッケージのみをみて購入することは少なくない。その中で私たちは何を手がかりにして商品を購入しているのだろうか。無意識的に手に取り、購入していると考えられるものも、「美味しそう」や「何か気になる」という心理的な要因が強いと考えられるが、他にも何らかの要因があり、その商品を手に取るに至っているはずである。
先行研究においては、「パッケージデザインのどの構成要素が商品を魅力的に見せているのか」という指摘がされている。そこで本研究では、「商品購入における魅力的なパッケージデザインの構成要素を明らかにする」ことを目的とする。
本研究ではテーマを「お土産」に限定し、「パケ買い」及び魅力的な商品パッケージについて心理的要因と具体的な購入要因、およびパッケージの構成要素について探り、パケ買いしやすいお土産の商品パッケージについて提案を行う。最終制作物として筆者の地元である東神楽町の「黒豆カレー」のパッケージ制作を行う。
まず既存のパッケージデザインについて調査を行った。調査対象は2017年から2021年の日本パッケージデザイン大賞で金賞以上を受賞したパッケージデザイン、じゃらんnetで北海道のお土産ランキングトップ20にあげられている商品のパッケージデザインである。これらのパッケージを「模様がある」と「カラフル」の2軸、「高級感がある」と「シズル感がある」の2軸、「人気順」と「色数」の2軸、「価格」と「人気順」の2軸でマトリックス図を使い、分析をした。結果は大賞を受賞している商品はイラストや模様が描かれているカラフルなもの、または白や黒を基調としたシンプルなデザインが多くみられた。また、シズル感があるものは少なく、庶民的であるデザインが多いようにみられた。一方北海道のお土産ランキングトップ20では人気順と色数、人気順と価格の間には相関はみられなかった。
次に、5つのレトルトカレーのパッケージ対象としたアンケート調査を行った(図1)。
図1 使用したカレーのパッケージ
調査の結果、高級感と購入意欲の間には相関は見られなかった。しかしシンプルさと購入意欲、おしゃれと購入意欲の間には正の相関がみられた。またインパクトと購入意欲の間には負の相関がみられた。このことから商品購入の際にはシンプルでおしゃれなパッケージデザインが好まれるのではないかと考えた。
続いて、アンケート調査を行うためにパッケージデザインを制作した。アンケート調査1で得ることができた結果をもとに、パッケージデザインのイメージを「インパクト」、「おしゃれ」、「シンプル」、「高級感」の4種類に決定した。パッケージ制作を行うにあたり、まず「商品パッケージ シンプル」、「商品パッケージ おしゃれ」、「商品パッケージ インパクト」、「商品パッケージ 高級感」とインターネットを用いて検索し、検索結果からランダムに3~4種類を抽出して特徴を書き出した。シンプルなパッケージは白や黒が多く、内容は商品名やブランド名、内容量や最低限の商品説明が書かれていた。次におしゃれな商品パッケージは特定の色を使用していることはみられなかったが、彩度が低く明度が高い色が多く使われている傾向がみられた。内容は商品名とブランドロゴが書かれていた。また、インパクトのある商品パッケージにはさまざまな再度が高めな色が使われており、内容には商品名やブランドロゴ、絵や写真、商品説明が書かれていた。最後に高級感のある商品パッケージには白や黒、深緑や藍色など落ち着いた印象の色を使用しており、内容は金や銀の文字を使用した商品名や最低限の商品説明であった。
この結果をもとに制作を行った(図2)。「インパクト」は目につくように意識した。「シンプル」はどのような商品棚にも馴染むことを意識した。「おしゃれ」はホテルや喫茶店をイメージした。「高級感」は要素をできるだけ削ることを意識した。
図2 制作したパッケージデザイン
次に制作したパッケージを対象にアンケート調査を行った。結果は概ね製作時の意図通りの回答となっており良好であったと考える。また結果から消費者の考え方は「高級感」と「おしゃれ」はほぼ同義となっているのではないかと考えられる。さらに通常の買い物では「高級感」が好まれ、お土産では「インパクト」が好まれることがわかった。ここから最終制作では「高級感」と「インパクト」に絞って制作を行った。
図3 制作したパッケージデザイン
最後に、事前調査と制作・検証を踏まえた結論を述べる。複数回のアンケート調査を通して、パッケージを見て購入するには「高級感」が大切であることがわかった。そこから「パケ買い」には「高級感」がもっとも必要だと考える。
また、お土産とする場合では「高級感・おしゃれ」に加えて「インパクト」のある商品も人気であった。人に渡す場合には贈り物の側面が強いためか高級感がある商品が人気であったが、それと同じように旅行の思い出としてや話のきっかけとしてインパクトがあり面白い商品も好まれるようである。魅力的なパッケージデザインの構成要素とは写真やタイトルであり、イメージには「高級感」が必要なのではないかと考える。加えて色やフォントも必要となるだろうと考える。